カミツレ図書館






     かぼちゃプリンをお一ついかが?



 メニューを見ると大々的にハロウィン限定と書かれた文字が目に入った。限定や新発売という言葉は妙に好奇心を駆り立てられる。
「教官、ハロウィン限定デザートがありますよ!なんだろう。これにしてみよう!」
 郁は迷わずハロウィン限定デザートを頼んだ。
 運ばれてきたものはどうやらかぼちゃプリンのようだった。
 お洒落な陶器のカップから覗き見えるのは鮮やかなオレンシ色だ。そのカップの下に敷かれている大きめの皿には、チョコレートソースや生クリーム、フルーツなどが彩られている。
 それを一口口に含むとかぼちゃの豊かな風味が控えめな甘さとともに口の中いっぱいに広がった。
 思わず顔が綻ぶのを止められない。
「美味いか?」
 堂上に問われて郁は満面な笑みを浮かべ「はい」と大きく頷いた。
「お前はなんでもうまそうに食うな」
 優しく微笑まれてドキッとする。
「きょ、教官も一口どうですか?」
 一すくい分をのせたスプーンを堂上に恐る恐るのていでつきだしてみると、堂上は一瞬目を見張り逡巡した様子を見せた。
 あ、まずい。これはあたしやりずぎ!?
 それはとっさにした行動で、本当においしかったから、堂上にも食べてもらいたいという純粋な気持ち故の行動であったのだが。
 自分のした行動は大勢の人がいるこの中ではあまりにも恥ずかしい行動であったと今更ながら気が付いた。
 柴崎ではないが、少女漫画系によくあるお約束のそれは、さすがにどんだけ恥ずかしいんだ、あたしは!と自分でツッコミ心の中で自分の行動の痒さに身悶えした。
「すみません」
 そう言って郁が自身の手を引っ込めようとした刹那、堂上は郁のその手を掴むとそのまま引き寄せた。スプーンにのった一口サイズのかぼちゃプリンが堂上の口の中に吸い込まれる。
 堂上は郁の手を離すと「ん、うまいな」そう呟いた。
 離された手を引っ込めると郁は真っ赤になって俯いた。
 自分でやっておきながらって思うけど…なにこれ、なにこれ!すっごい恥ずかしい!
「ってお前は…何自分でやっておきながら真っ赤になってんだ」
 笑みを含んだその声に郁は俯いて隠していた赤い顔を勢いよく上げた。
「だ、だってだって本当にやると思わなかったから…」
「せっかくだからな」
 恥ずかしげもなくそう言い放った堂上に多少不満は募る。
 違う、絶対この人こんなキャラじゃなかったはず。
 郁はふと自分の持つスプーンに目を落とした。そして何気なく見たそれに気づいてしまった瞬間、その先の行動ができなくなってしまった。
 これどうしよう。
 堂上が口をつけたスプーンを平然と口に運ぶことができなかった。だってこれって間接…。郁がスプーンを見つめ固まったままでいると
「食べないのか?」
 堂上に問いかけられた。恐らくこちらの心情を察しているのであろう、にやにやと人が悪い笑みを浮かべた堂上と目が合う。
 きっと睨み付けて「食べますよ!」けんか腰に強く言い放った。すると堂上は驚くほど優しく微笑んだ。
「ああ、食べろ。お前がうまそうに食ってる顔が好きなんだ」
 …っ!?そんなの反則!
 郁が再びかぼちゃプリンを一すくいし口に運ぶと堂上は満足そうに微笑んだ。





 fin.





おかわり?




           HappyHalloween!!
           カボチャプリン以外はまったくハロウィンらしさの感じられないSSですみません><;
           と、とりあえず、ハロウィン、駆け込みセーフですかね?え?ダメ?^^;
           これハロウィン限定とかにしたら、もっとだめ?えへw(←コラ
           たぶん一日じゃ誰も気づかないんだろーなー(笑)読めた人すっげ貴重とか?w(笑

           2008.10.31 2008.11.13再録(加筆訂正有り)