「わ、篤さんの手、あったか〜い」
堂上がソファに座り込み読書を楽しんでいると、郁がやってきてその隣にちょこんと座り込んだ。ぴとりと堂上の手に自分の手を重ね合わせた郁はその体温の心地よさに頬を緩ませる。
「お前の手は冷たいな」
堂上はそう言って自分の手を握ってくる郁の手に指を絡ませた。郁が嬉しそうに微笑む。
「ね、篤さん」
「なんだ?」
「よく手があったかい人は心の冷たい人だって言うよね」
「ああ。…なんだ、俺は心が冷たいってか?」
冗談口調で笑って返す堂上に郁はふるふると首を振ってみせた。
「もしそれが本当のことだったとしても、篤さんだけは例外だなーと思って」
「なんだ、それは」
微笑しながら本を閉じ、郁の手を握っていないほうの手で頭を撫でてやる。
「だって篤さんの心はあったかいもん。今の篤さんの手と同じくらい」
郁はそう言って微笑んだ。ああ、敵わない。
「何を痒いことを言ってんだ、お前は」
照れ隠しにそっぽを向いて答えると
「痒いってー!だって本当のことだもん」
郁はぷうっと頬を膨らませた。
お前は本当に…。
「分かった、分かった」
堂上は郁の前髪を掻き上げるとそっと額に口付けた。
「可愛いすぎだ、ばか」
茹で蛸のように赤くなった郁を確認すると堂上は優しく微笑んだ。
fin.
昨年ある方にプレゼント(押しつけた)したものです。
ほんわかするお話が書きたくて書いて個人的には初プレゼントさせていただいたSSでした。
結構気に入っていたりします。ほぼ押しつけたものだったのですが^^;
プレゼントのつもりだったので載せる気はなかったのですが;;
短いめなのはわざとですー。
2009.11.28初出 2009.03.28収録 加筆修正あり