ショーウィンドウに飾られたニット帽が目に入って郁は思わず立ち止まった。シンプルだが可愛らしさを感じるそのベージュのニット帽は見るからに暖かそうだ。頭の先端部分には拳よりも少し小さめのボンボンが付いている。
「あ、可愛い…」
そう零すと手を繋ぎ半歩先を歩いていた堂上もつられたように立ち止まった。
「見てくか?」
振り返って問いかけてきた堂上の言葉に遠慮が先立ち少し迷ったが、やはり気になって結局一緒に寄ることになった。
「ちょっとだけ…」
そう言って店内を堂上と少し散策する。目に入ったニット帽のところにたどり着くと郁はそれを手に取った。
「欲しいのか?」と尋ねてくる堂上に首を振る。
欲しくないわけではない。むしろ本当は欲しい。だがその気持ちを抑制させる強い感情が郁に首を振らせた。
それよりももっと欲しいものがあるから…。私がこれを被ったらきっと教官は…。
「あっ!教官ちょっと!」
ふと思い立ってそのニット帽を堂上の頭にかぶせてみた。
「教官、可愛い!」
にっこり笑ってそう言うと
「アホウ」
優しく響く堂上の声とともに頭の上にそれはふわりと今度は郁の頭に被せられた。
「こういうのは女が被るとしたもんだろう」
堂上はニット帽を深く郁にかぶせながら「よく似合う」と呟いた。その笑顔があまりに優しくて顔を赤くすると「子供みたいだな」と余計な一言が付け足される。
郁がむっと膨れて言い返そうとした刹那堂上は郁の頭の上の帽子をさっと取り上げた。
「欲しいんだろ?」
その言葉に思わず即答した。
「欲しい訳じゃないです!」
郁のその反応に驚いたように堂上は目を丸くする。
「いえ、あの…その…」
いい方間違えた!思わず噛みつくように返してしまった自分の返答をどう訂正したものか悩んでいると「からかって悪かった」堂上は自分のせいだと思い込んだようで謝罪を口にした。
「ち、違うんです…そうじゃなくて…」
堂上はそんな郁を不思議そうに見つめている。郁は意を決したように顔を上げた。
「あの、帽子被ってると教官に頭撫でてもらえないから…」
末尾は堂上の様子を窺うように小さくなった。俯いてなんとか最後まで主張できたことにほっとすると堂上がくるりと郁に背を向けた。
「教官!?」
戸惑いの声を上げる郁の頭に、振り向いた堂上の手がぽんと乗せられた。
「ならこれは俺と出かけないときに被れ。俺と出かけるときはここ、あけとけ」
堂上の手が郁の頭上でぽんぽんと跳ねる。
堂上は「買ってくる」言うとそのままレジに向かっていった。
「あ、教官!お金〜」
はっとして慌てて堂上を追いかけながら、郁の口元は思わず緩んでいた。
fin.
いつ書いたやつだよ…orzってなくらい前に書いたものを放置しておりました;;すみません;;
や、正確には中途半端に書いて続きが書けていなかったもの、ですね…^^;
そしていつもより短めです><;すみません;;
にしても…なんだこれ…。超不満だ…。なんか、違いますね、コレ;;上手く書けない自分に落ち込みます…orz
こんなんですみません(汗
2009.02.09