カミツレ図書館



     さぁ、心の準備をしましょうか





 ドアが開く音に反射的に顔を上げると堂上と目があった。思わず目を宙に泳がせる。
「じゅ、巡回お疲れ様です!」
 ごまかすように声をかけると「ああ」と返事が返ってきた。
 堂上はそのまま郁の机の横を通り過ぎるとかたんと席についた。
 瞬間的に郁は息を詰めた。事務室内の班の区画には自分一人だけで昨夜のことを思い出し居ても立っても居られなくなる。どうしてこういうときに限って誰もいないかなぁ。誰か居れば少しは落ち着けるのに…。見当違いにも班員に八つ当たりしてみるが自体が変わるわけではない。
 昨夜の出来事を思い出した郁は顔が意志に反して赤くなるのを感じた。何考えてるんだ、あたしは!郁は心中で自分を叱咤して勢いよく立ち上がった。
「コ、コーヒーでも入れてこようーっと!」
 堂上の方を振り返りもせずにそう宣言し、逃げ込むように給湯スペースに入り込んだ。堂上から郁の様子を確認できないところまで来て郁は詰めていた息をようやく吐き出した。
 無理!あの空間に二人でいるとか堪えらんない!だって!だってだって、教官が…!
 郁は再び昨夜の出来事を思い出すと顔を赤らめた。
 触って欲しいと宣言をしたのはつい先日のことで、それからまた前のように頭を撫でてもらえるようになった。
 それは郁にとってとても喜ばしく嬉しいことなのだが…。
 最近何かと堂上に触れられることが多くなったように思う。いや、触って欲しいと宣言したのはあたしだし、触ってもらえるのは嬉しいんだけど!なんか恥ずかしいし、それに昨日みたいなことされるのはちょっと……正直困る。いや、困るというのが正しい表現のようには思えないが。なんていうか、おかしくなる!
 郁は回らない思考をぐるぐるとさせながら自分のマグカップをようやく取り出した。
 触って欲しいと宣言をしてから夜の逢い引きもまた再開したわけで、昨日も堂上に呼び出され、郁はいそいそと出掛けていった。
 いつも通りにキスをすると堂上は愛おしそうに郁を見つめた。その視線に堪えられなくなって目を反らすと堂上に優しく抱き寄せられた。郁を落ち着かせるように大きな掌は背中を撫でその手は郁のうなじを伝って耳元の髪を掬い上げる。
 少し冷たい指先に竦むと堂上が吐息だけで甘く笑った。
「な、なんですか?」
 思わずうわずった声で尋ねれば
「いや、可愛いなと思ってな」
 堂上は郁に触れる手を止めずに答えた。
 とどめがこれだもんなぁ…。
 郁はそこで回想をストップさせると呟いた。

「笠原」
 思わぬ声に呼び止められて郁はびくりと肩を揺らした。体温は先ほどよりもさらに跳ね上がった。今まさに昨夜の堂上との出来事を思い出していたこともあり、動揺も上乗せだ。
 振り返ることができずに「はい」なんとかそれだけ答えると「俺にも頼む」と言われた。
 頷くだけで答えたが堂上が立ち去る気配はない。不審に思い振り返ると堂上の蕩けるような眼差しに捉えられた。ゆっくりとこちらに近づいてくる堂上から逃れることはもうできない。
 堂上は郁の隣に並ぶと自分のマグカップを取り出した。苦笑しながら郁を一瞥し少し困ったように微笑を浮かべる。
「そう身構えるな」
 見透かされていたことも恥ずかしく、郁は俯いて顔を上げられなくなった。
「お前が慣れてないのも恥ずかしいのも全部織り込み済みだ」
 堂上は言ってぽんと郁の頭の上に手を載せた。なんと答えたら良いのか分からずにこくりと頷くだけに止めると堂上は満足そうに微笑んだ。
「少しずつ慣らしていけばいい。ここまできたら少し待つくらい苦じゃない」
 もう言質はとったしな。小さく付け足された一言に胸が高鳴る。
 そこで堂上が最近郁に対してプライベートではスキンシップが余計に多かったのは、偶然でなかったということに気が付いた。
 と、堂上の撫でていた手に頭が引き寄せられた。僅かに下げられた耳に郁の心をとらえてやまない堂上の低い声が囁かれる。
「…逃げるなよ」
 熱い吐息が吹き込まれその言葉の意味を郁が理解した頃には堂上の姿はもう消えていた。郁はその場にずるずると力が抜けたようにしゃがみ込んだ。
 これだけでも心臓もたないのにこの先もつのか、あたし…。
この顔の赤み、もうとれないかも…。
 郁は真っ赤になった顔を両手で覆うとしばらくの間、給湯スペースから出ることができなかった。







fin.








           カミツレデートの日に何かupしたいー!ってupしてみましたが…、、、カミツレデートとまったく関係ないですね!はい。
           すすす、すみません;;しかもカミツレデートに遅刻してるよ、間に合ってないよ…orz
           久々の更新ですし、そろそろ甘いのいきたいなーって書いたんですけど、いろいろ不発でしょうか^^;
           ていうかな、私のSSはいつも中途半端で途中まで書いて放置のパターンが多いんですよね;;(コラコラ!
           ほんと、すみません><;書きかけのSSはたくさんあるんだけどなぁ…。
           そんでまぁ、あれですね!いろいろ知りたい方はまたしても拍手をポチっとしてやってくださいませw
           ついでにコメントとかあると管理人が喜びますので気が向いた方でまぁまぁいいんじゃないんすか?って思われた方がいらっしゃいましたら
           一言残してやってくださいませw(さりげに催促するな!
           管理人が小躍りして調子に乗ります(やめろ!
           そして、矛盾点はいつも通り軽くスルーの方向で!(オイオイ
           何はともあれ、カミツレデートは大好きです!vv(聞いとらんわ!
   
           2009.01.16