「堂上、これ上げる」
「ん?なんだこれは」
いつものように堂上の部屋で酒を呑んでいると小牧が話が途切れたタイミングで何かを堂上に寄越した。手渡されたそれはかなり大きい包みで触った感触は柔らかい。青い袋に包まれていて中身は開けてみないと分からない。
「王子様卒業とカップル成立記念に俺からプレゼント」
「は?」
堂上は怪訝な顔をしたあとに小牧のその言葉に眉間に皺を寄せた。
とりあえず、中身を確認するためにリボンを引く。小牧が包んだのであろうか。男同士でこんなファンシーな包みはちょっといただけない。
手を入れて中身を探ると堂上の手に直接に綿のような柔らかな感触が伝わってきた。そのまま引っ張り出してみる。
取り出したそれを見て堂上は呑んでいたビールを勢いよく吹き出した。プレゼントにビールがかからなかったのは小牧がそれを掴み上げ辛うじて守ったからだ。
「おまっっ…!なんだこれは!!」
小牧がくれたプレゼントは抱き枕にできる大きさのクッションであった。それだけならば普通に喜べもしたのであろうが、そのクッションにプリントされていた写真が堂上の動揺をいいだけ煽った。
「え?抱き枕だけど」
小牧はしれっと言ってのける。
「……っ!そういうことを言ってるんじゃないっっ!」
小牧は堂上の問いかけの意味を察していたようだったが、わざと堂上に指摘させるためにそれた返答を返したようだ。
「ああ、これ?柴崎さんに協力してもらって作ったんだけど。最近好きな絵とか写真をプリントしたクッションって流行ってるんだってね」
そのクッションにプリントされていたのは郁の写真である。
「柴崎さん曰く、それとっておきの写真らしいよ」
言われてついまじまじとそれを見つめてしまった。
恥ずかしそうにそれでも嬉しそうにはにかんだ笑みを浮かべて写っている。
確かにこれは…可愛い。それ以外に出てくる言葉が見つからない。
「堂上、にやけすぎ」
小牧に小突かれて堂上は我に返った。
「おまっっ。これを俺にどうしろって言うんだ!」
「え?だって外泊まだ二人でしたことないんでしょ?抱き枕にして寝たらいいんじゃない?」
「アホか!」
小牧のその言葉に堂上は思い切り怒鳴った。小牧はそれを無視するとこれは柴崎さんから、と封筒らしきものをテーブルの上に置く。
「柴崎さんからの伝言なんだけど、その人形がなんか堂上そっくりなんだってさ」
「は?」
小牧は言いたいことだけ言って最後におやすみと言うと堂上の呼び止める言葉を聞きもせず部屋を出て行った。
バタンとドアが閉まる音ともに先程の光景を思い出したのか、小牧が盛大に吹き出した声が堂上の耳に入った。
不機嫌な顔になりながらもその封筒を一瞥する。柴崎からというからにはろくなものではないような気がする。
堂上はそれを手に取ると中身を取り出した。それは写真のようだ。そのままそれを表に返す。
自分の頬が緩んでいくのが分かった。
小さな人形のようなものを抱えて幸せそうに眠る郁が写っていた。その写真に思わず苦笑が漏れる。
「どこが俺に似てるんだ、アホゥ」
静まり返った部屋を甘い響きだけが満たした。
fin.
実はこのSS、かなーり前に書いたモノだったりします。
どうも気に入らなくてupしてませんでした。すみません><;
ありがちかなーとも思ったので、upに踏み切れなかったというのもあるのですが…^^;
ちなみに小牧は柴崎から手渡されたブツの中身は知りません。写真だってことは知ってるけど。
やっぱり郁ちゃんの可愛らしい姿はどじょが独り占めですね!(笑)
私の場合、かなーり前に書いたモノを今更upしてたりとかします^^;
2008.12.21