温かく見守られ…?





「笠原さん、なんか今日機嫌いいね?何かあった?」
「あ、分かります?」
 妙にウキウキとした様子の郁に小牧が声をかけると郁は嬉々と小牧に話し出した。
「実は昨日コーヒーの豆を買ってきたんです!これ、すっごくおいしいって評判なんですよ!柴崎と買いに行ってきたんですけど、これなかなか手に入らない代物なんです!だから買えて嬉しくって。さっそくみんなに飲んでもらおうと思って!」
 郁は「小牧教官、楽しみにしてて下さいね」と言うと給湯室にいそいそと入っていった。しばらくたつとおぼんに一杯のマグカップをかかえた郁が戻ってきた。そして事務室にいる隊員達に順にそのマグカップを配っていく。
 よほどそのコーヒーはおいしいらしいのか、自分だけでなく他の隊員にも飲ませたいらしい。
「堂上教官、コーヒーです。どうぞ」
 にこにこしながら手渡されたマグカップを堂上は受け取った。
「ああ、悪いな」
 コーヒーは堂上が最後で、もう受け取ったのでおぼんを戻しにいってもいいはずなのに郁はなぜか立ち去ろうとしなかった。
「どうした?」
 気になって堂上が声をかけると
「教官、飲んでみてください!」
 郁はおぼんを胸に抱えたまま机に置いたマグカップに視線を遣った。
 促されて堂上は使い慣れているマグカップを手に取った。それを一口口に含むと風味豊かなコーヒー独特の苦みが口の中一杯に広がった。その苦みは心地の良い苦みだ。
 確かにこのコーヒーは他のコーヒーとは違うということが分かった。最近はインスタントばかりだったのでいっそうおいしく感じられる。
「おっ。うまいな」
 思わずそう漏らすと立ったまま堂上の様子を窺っていた郁が
「でしょ!!これ、絶対おいしいから飲んでもらいたかったんです!」
と言って嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
 その様子はあまりにも可愛すぎた。書類に目を通そうと思っていたのに思わず郁の顔に釘付けになった。給湯室に戻ろうとした郁を思わず呼び止める。
「なんですか?」
 郁は笑顔で振り返った。堂上は椅子から立ち上がると郁の頭をくしゃりと撫で二度ほどぽんぽんと軽く叩いた。一方的にそうして席に着く。
 郁は一瞬不思議そうな顔をしたがその後先ほどよりも嬉しそうな笑みを浮かべ給湯室に戻っていった。
 郁が立ち去るとタイミングを見はからっていたかのように小牧が堂上に声をかけた。
「堂上、かわいーねー。笠原さん」
 明らかにからかい口調の小牧に堂上は渋い顔になった。無視を決め込んで書類に戻ろうとしたとき事務室内が異様に静かなことに気が付いた。ふと周りを見渡すと隊員たちの視線が堂上に集まっている。にやにや笑みを浮かべている隊員たちが先ほどの郁と堂上のやりとりを見ていたのは明白である。
 その生温かい目はなんだ!?
 さすがにこれは無視できない。
「な、なんですか!?ちゃんと仕事してください!!」
 堂上は隊員たちを一喝するが視線は集まったままだ。そうこうしているうちに郁が給湯室から戻ってきた。ただならぬ空気に首を傾げる。
「あれ?みなさんどうしたんですか?」
 不思議そうに尋ねてくる郁に
「いや〜しっぽ振ってる可愛らしい子犬に手を伸ばさずにいられなかったんだろーなーと思ってさ」
 誰彼かまわず隊員たちが答えた。郁にはますます訳が分からない。
「あんたたち、見てないで仕事してください!笠原もさっさと仕事に戻れ!」
 堂上の怒声に郁は反射で敬礼し慌てて席に着いた。
「堂上教官、なんで怒ってるの?」
 「さあ?」手塚からそう返事が返ってくるのと小牧の笑い声が響くのはほとんど同時であった。



fin.








           いじられる運命なのさ!(ニコ
           そして失敗失敗;;わけの分からない書き方してしまいました;;
           ま、いっか!(よくない!!
           可愛い郁ちゃんに思わず手が伸びてしまった教官を書きたかったんだと思います。いえ、そうなんです!
                           
           2008.07.29