その罪の重さを知る



 結局買い出しに行くことになったのは堂上はもちろんのこと手塚及び小牧の三人だ。手塚と小牧は堂上の手伝いにかり出された。
 先に煎餅と紙皿などを買って郁と柴崎二人が好きだと言う行きつけのケーキ屋を目指す。
 ケーキ屋についてみるとそこはテイクアウトだけでなく食べることもできるようで思っていたよりも店内は広かった。ケーキだけでなくレジの周りには洋菓子も売られている。
 華やかに飾られた色とりどりのケーキを選ぶ客はほとんどが女性だ。見回してみると自分らの他に男性の客はいないようであった。堂上は居心地の悪さを覚えた。
 大の男が三人でケーキ屋にいるというのは正直いただけない。ちらりと隣の二人を窺ってみるがさほど二人はそのことに関して気にしていないらしい。手塚はきっとここに郁と柴崎とよく来ているのだろう。慣れているからそれほど気にしないのかもしれない。小牧にいたっては毬江がいる。こういう手の店は来慣れているのだろう。それに容姿が容姿だ。女性受けの良い小牧ならばケーキ屋にいてもすんなりと溶け込める。
 対して自分はと言えば先ほど郁に拳で殴られた左頬の腫れがまだ引いていない。もはや溶け込む以前の問題である。
 静佳に付き合ってたまにケーキ屋に来ることもあったが最近ではそれもめっきりなくなったので久々のケーキ屋独特の雰囲気に堂上はたじろいだ。心底後悔しながらケーキが並ぶケースを見る。
「堂上二正、これなんかどうですか?値段も結構手頃だしいいと思いますけど」
 手塚に声をかけられて指さしているそのケーキを見る。確かにそのケーキは見た目に華やかさがあるにしては安いほうであった。自分の懐と相談しそのケーキを多めに買うことに決める。
 軽快にいろいろなケーキを勧めてくる手塚に
「ずいぶん詳しいな」
 思わず感嘆の声が漏れた。
「あいつらによく付き合わされて奢らされたりもしているので…」
 手塚がそこまで言いかけて渋い顔をして押し黙った。どうやら自分にとっての失言だったらしい。尊敬している上官に尻に敷かれるような様子を知られたのが不本意だったようだ。
「大丈夫だよ、手塚。女の子泣かせて上官から罰則もらってる堂上のほうがよっぽど格好悪いから」
 店内を探索していなくなっていた小牧がいつのまにか戻ってきたと思ったら手塚をフォローした。堂上は不本意ながらも本当のことなので言い返せずにむっつりと黙り込む。
 格好悪くて悪かったな!と内心では小牧に毒づいた。
 手塚はそのフォローに困ったように先ほどのケーキ選びに話題を戻した。

 買い出しが終了し車に乗り込むと手塚と小牧は後ろに乗った。ケーキが崩れないように持つ係が必要だ。堂上が車を発進させると
「戻ったら笠原さんにちゃんと謝らなくちゃだよ、堂上」
 小牧が思い出したようにその話題を引っ張り出した。
「分かってる!」
 小牧のその言葉に堂上は仏頂面で返した。
 その様子を見て小牧は本日最大級の上戸に入った。



fin.








           どんな風にケーキを買いに行ったのか気になって考えついたお話です。
           男三人の話は初めて書きました。
           タイトルがシリアスな感じですが中身は全然違います。^^;
           こんな三人の会話も大好きだったりしますw
  
           2008.07.18