失敗した。こんなことになるならもっと慎重になっておくべきだった!今になって後悔しても遅い。もうすでに堂上は不機嫌な顔になっている。
 その日郁は堂上の見舞いに来ていた。当麻事件で負傷し、入院している身である堂上とは自分が会いに行かなければなかなか会えない。そのため少しでも早く堂上に会いたいと訓練が終わった後急いで来たのは良かったのだが。有ろう事か堂上を怒らせてしまった。単に口が滑ったと言ってしまえばそれまでなのだが。

 むっつりと押し黙っていた堂上がやがて口を開いた。
「罰として郁から俺にキスしろ」
 堂上の言葉にぎょっとする。
「ええ!?罰ってだってそんな…。確かに今のは私が悪かったと思いますけどっ。で、でも…無理!できません!」
 郁は真っ赤になって顔の前で手を振り堂上に抗議した。
 だ、だってそんなの恥ずかしいし、絶対できない!
「無理なわけあるか。お詫びの気持ちとして心込めろよ」
 堂上はその罰則を変えるつもりはないらしく即却下する。混乱しているうちに腕を捕まれた。そのまま抗えない力で引き寄せられる。
 郁は抵抗して身を捩ってみるが無駄な抵抗であった。堂上はびくともしない。観念して堂上と視線を合わせた。
「じゃ、じゃあ…目、瞑ってて下さい…」
 郁がそう消え入りそうな声で要求すると堂上が言われた通り目を瞑った。
 こんなときでしか隙のあるところを見せないのでしばらくその大好きな顔を郁は見ていたかったがいつまでもこのままでいるわけにもいかない。
 どきどきしすぎて私死んじゃうかも。郁も同様に目を瞑った。


えいっ。


 唇を離すと堂上がパチリと目を開けた。そして凄まじく不機嫌な顔になる。
「お前…キスって言ったら普通口だろうが!」
「ええ!?だって口じゃなきゃだめだなんて言わなかったじゃないですか!」
 郁は屁理屈を言って堂上の言葉に対抗した。
「キスはキスです!」
 だって、無理!目が合うだけで私なんか心臓はち切れそうなのに。これが精一杯だ!  郁は堂上の頬に触れたか触れてないか分からないような軽い口付けをした。それはやはり堂上には不満だったらしい。
「やり直しだ、やり直し!」
 堂上はそう言って郁が抗議する前に今度は先ほどよりも近い距離まで郁の顔を引き寄せた。鼻先が触れそうな距離まで二人の顔が近づく。
 ギャー!無理!郁が目を瞑って
「無理ですー!私の心臓が止まったらどうしてくれるんですかー!」
 最後の抗議をしたところで堂上の力が緩んだ気がした。
 あれ?不思議に思ってうっすらと目を開けてみる。顔を背けてくっくっと声を押し殺して笑っている堂上が目に入った。
 もしかしてからかわれた?
 堂上が郁を解放するとそのまま腹を抱えて笑い出した。
「ちょ、何笑ってるんですかー!?」
 郁が椅子から立ち上がってきっと堂上を睨み付けると「悪い。あんまりお前がかわいいから」とようやく笑いが収まったらしい堂上がそう応えた。
「そんなこと言ってもごまかされないんですからねっ!!」
 郁はふいっと堂上から顔をそらした。くっそー、そうやって私で遊んでればいいんだ!いつか痛い目みるんだから!郁は内心毒づく。
 でもまぁさっきの険悪な雰囲気よりはいっか。堂上の注意がずれたことに関してはありがたかった。
 郁がそんなことを考えていると一拍おいて堂上から「悪かった」ともう一度謝罪が入った。郁が堂上に向き直ろうとした刹那腕を引かれる。ベッドに倒れ込むような体勢になった。郁が慌てて起き上がろうと顔を上げると唇に柔らかい感触がした。
 不意打ちだ!と思ってぎゅっと目を瞑る。触れるだけの優しいキスが終わると堂上はいたずらに成功した子供のように満足げに意地悪く笑った。
 うわっ、強烈!!そういう顔に私が弱いってこと分かってないな。
 郁の気持ちは露知らず堂上は「とりあえずお前からのキスはまた今度だな」というと郁を抱きしめた。
 それはもう終わったことじゃなかったのか。
「楽しみだな」と口の端をつり上げにやりと笑う堂上を郁は精一杯睨み付けた。



fin.








           ちゅーさせるのが好きな管理人でほんとすいません。><;
           こういう堂郁がものすごく好きなんです!
           ちょっとSな教官になっちゃったかしら?イメージ壊したらすいません;;
           とりあえず!甘甘大好きな同士さん、いらっしゃーい!(とわけのわからんことを言ってみる)
           いや、甘甘じゃないやつも好きだけどね!ギャグとかシリアスとかも好きよ!
               
           2008.07.03