その日が来なければいいと願ってもそんな願いは虚しく、その日はやってきてしまう。飲み会のはずだった
今日の訓練はいつもより早く終わった。郁が自室に戻ると柴崎が先に戻っていた。
肝試しまでの時間はまだまだ先である。玄田からの提案で8時ぐらいがいいだろうということになったからだ。夕食をとって風呂にもゆっくり入れるだろう。それでもその肝試しまでの時間が刻一刻と迫っているのだと思うと郁は落ち着かなかった。
「ただいま〜」
言って柴崎の向かいにどかりと座る。
「はぁ〜疲れたぁ」
「お疲れ〜」
柴崎は郁に声をかけると「何か飲む?」と立ち上がった。
「ありがとう。じゃあアイスコーヒー!」
「はいはい〜」
机に目一杯腕を伸ばし郁は頭を項垂れる。氷を入れているであろうカランコロンという音を聞きながら郁はため息を吐いた。
柴崎は怖いものとか肝試しとかってどうなんだろう。自分から参加するっていうからにはやっぱり平気なのかな。
そういえば肝試しは二人一組のペアで行うことを玄田が言っていた。そのペアもいったいどう決めるのか。そもそも特殊隊員のあの人数で肝試しというのはいつになっても終わらないのではないだろうか。
郁がそんなことを考えているとコップを2つ持った柴崎が郁の向かいに腰を下ろした。「はい」と渡されたコップを「ありがとう」と言って受け取る。
柴崎がいつもより機嫌がいいように見えるのは気のせいだろうか。郁はアイスコーヒーを一気に呷るとタンと景気の良い音をさせテーブルの上に置いた。
「なーにー?そんなに肝試し嫌いなの?あんたいつもホラー映画あたしと一緒に見てるじゃない」
郁の核心を突いてくるあたりがさすが柴崎といったところか。肝試しのことで頭が一杯になっていた郁の心情はどうやら見透かされていたらしい。
「それとこれとは話が別!作り物と現実は違うんだからー」
「変わらないじゃない。肝試しなんて人が脅かすもんだし」
柴崎が言ったところで郁ははっとしたように柴崎を見た。
「そっか!」
どうやら今の今までそのことに気づいていなかったらしい。あからさまに安心した様子の郁に柴崎はなんだか面白くなくなった。
そこでふと名案が思い浮かぶ。
「そうだ!あたしがあんたにいい話してあげる」
「いい話?」
「肝試しが怖くなくなる話」
言って柴崎はにやりと笑う。
「え?何ソレ?そんなんがあるの?」
郁は机に身を乗り出し目を輝かせている。予想以上の食いつきぶりだ。
「そのかわり、この話は最後まで聞かなくちゃ効果はないから」
柴崎の微笑みがやけに不気味であったが今の郁にはそんなことを気にする余裕すらなかった。
to be continued…
すみません、またしても続きます。
今回は郁ちゃんにもつらい思いをしてもらうことになりそうです(笑
スローな更新で申し訳ないです。とりあえず、頑張ります;;
2008.06.20