カミツレ図書館

     Bonds 2



 日報が書き終わり郁は堂上に見てもらっていた。もう郁が最後で事務室に残っているのは郁と堂上、それに今日残業予定の小牧の三人だけであった。
「よし、終わりにして良いぞ」
 堂上のその言葉にほっとして、お疲れ様でした、そう言って郁が事務室を出ようとしたときだったふいに堂上に呼び止められた。
「今日、飯でも食いに行くか?」
 堂上のその誘いが嬉しく、頷こうとして郁ははっと昼間の約束を思い出した。残念だがこればっかりは仕方がない。郁は少し躊躇したあと断りを入れた。
「すいません、教官。今日はちょっと先約があって…」
「なんだ、柴崎か?」
「いえ。今日は私の大学時代の先輩に夕食誘われてまして。すいません、また今度誘ってくれますか?」
 郁が怖ず怖ずと尋ねと。
「それは、男か?」
 堂上が郁から目を反らした。郁は思いもしていなかった言葉が堂上から出たことに驚いて目を瞬かせた。それでも堂上の心情に気づけたのは自分がその状況だったらと考えたからである。だから素直に答えた。いくら恋愛経験が豊富でない郁でも自分が誰か男と二人だけで出かければ堂上が嫌な思いをするだろうということは分かっていた。
「あ、一人は男の人ですけどもう一人は女の人です。三人でご飯食べに行こうってことになって。二人とも大学時代の陸上部のメンバーなんです」
 久々に話ができることを郁は純粋に喜んでいた。何年ぶりだろうと考えて心が弾む。堂上は郁のその様子を察したようで
「終わったら迎えに行く。電話しろ」
 とそれだけそっけなく言った。郁は堂上のその言葉に笑顔ではい、と頷いた。

「行かせちゃって良かったの〜?堂上」
 郁が事務室を出た後小牧が声をかけてきた。
 あんな風に喜んでいる郁を見たらさすがに行くなとは言えなかったというのが本音だ。それに女子を混ぜた三人で行くというのだ。そこまで心の狭い人間に堂上はなりたくなかった。
「三人で行くらしいからな。そこまで心の狭い人間じゃないぞ、俺は」
 言ってはみたが心配であるのは事実だ。
「まぁねー、あんな嬉しそうな顔されちゃったら行くな、とは言えないよねー」
 小牧も堂上の気持ちが分かっているようで頷く。
「三人で食事か…。手強いね」
 小牧の意味深長なその言葉に堂上はむっつりと押し黙った。



to be continued…








           えー、一応20000打感謝記念小説です。
           更新遅いくせに短くてすみません。><;
           きりの良いところ、とか思ってると短くなっちゃうんですよね(汗)短く切ってすみません;;
           一応堂郁メインですから!ネタバレ(?)みたいのするつもりはないですがめちゃめちゃ堂郁です!
           堂郁仕様になるはずです、はい。この先も甘いはず…そう言っておくことにします。^^;
           
           2008.09.13